回折現象が写真に与える影響
こんにちは、カメラマン兼ガジェットライターのMIYABIです。今回は、カメラ愛好家の間でよく議論される「回折現象」について深掘りしていきます。F値との関係や写真への影響、そして技術的な理由まで、詳しく解説していきます。
この現象は風景写真を撮る上で重要になってきます!
回折現象とは?カメラ初心者にもわかりやすく解説
回折現象とは、光が小さな穴や隙間を通過する際に起こる現象です。カメラの世界では、レンズの絞りを絞りすぎると画像がソフトになってしまう現象を指します(絞りの値であるF値の数値を大きくするF11からF13など)。つまり、シャープな写真を撮ろうと絞りを絞りすぎると、逆効果になってしまうんです。
初めて聞いた方は「え?絞れば絞るほどシャープになるんじゃないの?」と思うかもしれません。でも、実はそうではないんです。この現象を理解することで、より質の高い写真が撮れるようになります。
F値と回折現象の関係:知っておくべき重要ポイント
F値というのは、レンズの絞りの開き具合を表す数値です。F2.8やF5.6など、よく耳にする数字ですよね。F値が大きくなるほど絞りは絞られ、被写界深度が深くなります。
ところが、F値を上げすぎると回折現象が顕著になり、画像全体のシャープネスが低下してしまいます。一般的に、APS-Cサイズのセンサーを搭載したカメラではF11〜F13あたりから、フルサイズセンサーのカメラではF13〜F16あたりから回折の影響が目立ち始めます。
因みに、以前お話ししたことがあるレンズ設計者の方曰くフルサイズ(35mm)でもF11から回折現象が起こるレンズもあるそうです。
回折現象が写真に与える影響:実例で見る違い
回折現象の影響を実際に見てみましょう。以下は同じ被写体をF8とF22で撮影した比較です:
- F8で撮影した写真:
- 全体的にシャープで細部まで鮮明
- コントラストが高く、はっきりとした印象
- F22で撮影した写真:
- 全体的にソフトな印象
- 細部のディテールが若干失われている
- コントラストがやや低下
この違いが回折現象の影響です。F22の写真は被写界深度は深くなっていますが、シャープネスが犠牲になっているのがわかります。
*作例については後日追加していきます。
回折現象の技術的な理由:光の波動性から解説
では、なぜ回折現象が起こるのでしょうか?その理由は光の波動性にあります。
光は波としての性質を持っています。絞りを絞りすぎると、光の波がレンズの絞り羽根の端でわずかに曲がります。
この曲がった光が、センサー上で干渉し合うことで、ぼやけた像を作り出してしまうのです。
これは物理学的には避けられない現象です。つまり、どんなに高価なレンズを使っても、絞りを絞りすぎれば回折は起こってしまうんです。
回折を克服するテクニック:プロの撮影術
回折現象を完全に避けることはできませんが、その影響を最小限に抑えるテクニックはあります。以下にいくつか紹介します!
- 最適なF値の選択:
自分のカメラの特性を知り、回折の影響が出始めるF値を把握しておきましょう。多くの場合、F8〜F11あたりが最もシャープな画像を得られるF値です。 - フォーカススタッキングの活用:
被写界深度を深くしたい場合は、絞りを絞る代わりにフォーカススタッキングを使用します。複数の写真を合成することで、回折を避けつつ深い被写界深度を実現できます。 - 適切な露出補正:
絞りを開けることで光量が増えるため、適切な露出補正が必要です。明るい場所で撮影する際はNDフィルターを使用することで絞りすぎを抑えられます。 - ポストプロセッシングでのシャープネス調整:
わずかな回折の影響は、RAW現像時にシャープネスを調整することである程度補正できます。ただし、過度な補正は不自然な仕上がりになるので注意が必要です。
NDフィルターは上記に紹介している可変式が使う上では便利です(濃度が固定されているもの方が画質は綺麗です)。
Canon, Pentax と Nikon のカメラ内回折現象補正
Canon, Pentax と Nikonのカメラでは一部のカメラで撮影時にJpegの場合において、回折現象を補正してくれる機能がついているものがあります。
Canonのカメラに関しては一眼レフ時代からこの機能がレンズ光学補正の中にあり、Nikonに関してはミラーレスカメラのZシリーズになってから機能として備わっています。
カメラ内での回折現象補正はRAW形式で撮影する場合には適用されないため、基本的にはデジタルでの補正ではなく撮影時からF値を調整した方が最良の結果を得られます。
マイクロフォーサーズの場合
PanasonicやOLYMPUS(OM SYSTEM)などが搭載しているマイクロフォーサーズの場合はF8ほどから影響が顕著に出ると言われています。これはセンサーサイズが小さいことが要因です。
センサーサイズが小さくなるにつれて同じ絞り値でも、ボケ量は少なくためセンサーサイズを意識して撮影することが大事ですね。
回折現象とレンズの選択:知っておくべき関係性
レンズの選択も回折現象と無関係ではありません。以下のポイントを押さえておきましょう:
- 画素数との関係:
高画素のカメラほど回折の影響を受けやすくなります。最新の高画素機を使用する場合は、より注意が必要です。 - レンズの解像度:
高解像度のレンズほど、回折の影響が目立ちやすくなります。皮肉なことに、高級レンズほど回折には敏感なのです。これは高価なレンズは光学設計的に高画素の写真撮影に対応するためです。 - センサーサイズの影響:
一般的に、センサーサイズが大きいほど回折の影響は小さくなります。同じ絞り値の場合にはフルサイズカメラの方が、APS-Cやマイクロフォーサーズよりも回折に強いと言えます。
実践編:回折を意識した撮影テクニック
ここからは、回折を意識しながら素晴らしい写真を撮るためのテクニックをいくつか紹介します。
- 風景写真での対策:
風景写真では深い被写界深度が必要ですが、F13以上に絞ると回折の影響が出やすくなります。代わりに、F11程度で撮影し、フォアグラウンドにピントを合わせることで、見た目の被写界深度を深くする技があります。 - マクロ撮影での工夫:
マクロ撮影では被写界深度が極端に浅くなるため、つい絞りすぎてしまいがちです。しかし、F22などの小絞りではシャープネスが落ちてしまいます。代わりに、F8〜F11程度で複数枚撮影し、フォーカススタッキングを行うことをおすすめします。 - ポートレート撮影での意識:
ポートレート撮影では、被写体の立体感を出すために開放気味で背景をぼかして撮ることが多いですが、逆に絞りすぎて回折の影響が出ることはあまりありません。ただし、グループショットなどで絞る場合にはレンズの焦点距離にもよりますが、50mmほどまでのレンズで三列ほどの集合写真では手前にピントを合わせればF8まで絞れば十分に全体にピントがきます。 - 星景写真での対策:
夜空の星を撮影する際、F1.8やF2.8などの開放で撮ることが多いですが、風景もシャープに収めたい場合はどうすれば良いでしょうか。この場合、星空と風景を別々に撮影し、合成する技法が効果的です。星空はF2.8で、風景はF8程度で撮影し、後で合成することで回折を避けつつ全体的にシャープな写真が得られます。
最新のカメラ技術と回折:今後の展望
カメラ技術の進歩は目覚ましく、回折現象への対策も日々進化しています。最新の動向をいくつか紹介しましょう。
- AI技術の活用:
最新のカメラやソフトウェアでは、AI技術を使って回折による画質の低下を自動的に補正する機能が登場しています。これにより、撮影後の画像処理で回折の影響を軽減できるようになってきました。 - センサー技術の進化:
センサーの感度や解像度が向上し続けており、高ISO感度での撮影が以前より容易になっています。これにより、絞りを開けたままでも十分な被写界深度が得られるケースが増えています。 - 計算撮影の発展:
スマートフォンカメラで一般的になった計算撮影技術が、一眼カメラの世界にも徐々に浸透しつつあります。複数の画像を瞬時に合成(深度合成)することで、回折を避けつつ被写界深度の深い写真を実現する技術があります。
深度合成はAdobeのPhotoshopなどで行うことができます。
まとめ:回折を味方につけて、より良い写真を
回折現象は、一見すると厄介な問題に思えるかもしれません。しかし、適切に理解し、うまく付き合っていくことで、むしろ写真の質を向上させるチャンスになります。
- F値と画質の関係を理解し、最適な設定を選ぶ
- 必要以上に絞りすぎないよう注意する(APS-CはF11未満, フルサイズはF13未満)
- フォーカススタッキングなどの技術を活用する
- カメラやレンズの特性を把握し、その機材に合った撮影方法を選ぶ
これらのポイントを押さえることで、回折現象に惑わされることなく、素晴らしい写真を撮ることができます。
みなさんも、回折現象を意識しながら、素敵な写真ライフを楽しんでくださいね!
カビを防止するアイテム
カメラは6月から8月の湿度が上がりやすい時期にカビやすくなるため、
防湿ケースなどに保管した方が良いです。
カビてしまった場合の修理費用は数万円近くかかってしまい、
写りにも影響が出てしまいます。
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