ベースISO感度とは?カメラの画質を最大化する設定方法と機種別の違いを徹底解説

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カメラを手にして最初にぶつかる壁のひとつが、ISO感度の設定ではないでしょうか。「とりあえずISO AUTOにしておけばいい」と思っていた頃の自分に教えてあげたい。
ベースISO感度を理解するだけで、同じカメラから引き出せる画質がまるで変わるということを。

この記事では、ベースISO感度の基本的な仕組みから、主要カメラメーカー別の一覧、実際の撮影での活用テクニック、そしてよくある疑問まで、できるだけ丁寧にまとめました。「自分のカメラのベースISOっていくつなの?」「拡張ISOって使っていいの?」といった疑問を持っている方にとって、きっと役に立つ内容になっているはずです。


目次

ベースISO感度とは?基本概念を理解する

ベースISO感度の定義

ベースISO感度とは、カメラのイメージセンサーが最大のダイナミックレンジと最高の画質を発揮するISO設定値のことです。

もう少し噛み砕くと、センサーからの電気信号に対する増幅(アナログゲイン)が最小限の状態であり、センサー本来のポテンシャルをフルに引き出せる設定値ということになります。

多くのカメラではISO 100がベースISO感度ですが、機種によってはISO 64だったり、ISO 160だったりと違いがあります。この違いを知っているだけで、撮影時の判断が変わってきます。

ネイティブISOとの違い

「ベースISO」と「ネイティブISO」はよく混同されますが、厳密には異なる概念です。

ベースISOは、ネイティブISO範囲の中で最も低い1つの値を指します。例えばNikon Z8ならISO 64、Canon EOS R5ならISO 100がそれに当たります。

一方、ネイティブISOはカメラがハードウェアレベルのアナログゲイン調整で対応するISO設定の全範囲のこと。Nikon Z8であればISO 64〜25,600がネイティブISO範囲です。つまり、ベースISOは「ネイティブISO範囲の下限値」と理解するのが正確です。

さらにその外側にある拡張ISOは、ネイティブ範囲の外にデジタル処理で設けられた設定値で、「Lo」(低感度側)と「Hi」(高感度側)が存在します。これについては後ほど詳しく解説します。

ISO感度の仕組み(初心者向け)

そもそもISO感度とは何なのか。デジタルカメラのイメージセンサーは、光(フォトン)を電子に変換し、その電荷を電圧に変換してから、アナログ増幅回路を通し、最終的にADC(アナログ-デジタル変換器)でデジタル信号に変換しています。

ISO感度の変更とは、このアナログ増幅回路のゲイン(増幅率)を変えることを意味します。ISOを1段上げる(例:ISO 100→200)と、電圧は約2倍に増幅されます。

ここで重要なのは、センサー自体の物理的な感度(量子効率)はISO設定で変化しないということ。ISOを上げても「センサーが光を多く集める」わけではなく、信号を電気的に増幅しているだけなのです。アンプのボリュームを上げるイメージですね。音量を上げればノイズも一緒に大きくなるのと同じで、ISOを上げれば画像のノイズも増えます。

ISO感度の数値は、100、200、400、800…と倍々で増えていきます。1段上げるごとに明るさは2倍になりますが、ダイナミックレンジは約1段ずつ狭くなります。

ベースISO感度で得られるメリット

ベースISO感度で撮影すると、以下のメリットがあります。

ノイズが最小限になる。 アナログゲインが最小のため、信号に対するノイズの比率(S/N比)が最も良い状態です。暗部のザラつきが最小限に抑えられます。

ダイナミックレンジが最大になる。 センサーのフルウェルキャパシティ(各画素が蓄積できる最大電子数)がフルに活用されるため、白飛びから黒つぶれまでの記録可能範囲が最も広くなります。実際、Nikon D850はISO 64(ベース)で約14.8段のダイナミックレンジを持ちますが、ISO 800では約11.3段まで低下します。

色再現性が最良になる。 ノイズが少ないことで色情報の精度が高まり、微妙な色の階調も正確に記録されます。

ディテールの保持が最高になる。 ノイズリダクション処理が最小限で済むため、細部の情報がしっかり残ります。

つまりベースISO感度は、カメラの「画質の上限」を引き出すための設定値。ここが出発点であり、基準点なのです。


主要カメラメーカー別ベースISO感度一覧

「自分のカメラのベースISOはいくつ?」──これが気になる方は多いと思います。ここでは、2024〜2025年時点の主要メーカーの機種別ベースISO感度を一覧でまとめました。

Canon(キヤノン)

キヤノンのEOS Rシリーズは、スチル撮影のベースISOが全機種ISO 100で統一されています。非常にわかりやすいですね。ただし、動画のログ撮影ではベースISOが異なります。

機種ベースISO(スチル)ネイティブISO範囲Canon Log 3 ベースISO
EOS R5ISO 100100–51,200ISO 800
EOS R5 Mark IIISO 100100–51,200ISO 800
EOS R6 Mark IIISO 100100–102,400ISO 800
EOS R6 Mark IIIISO 100100–64,000ISO 800(デュアルベースISO:800/6400)
EOS R7(APS-C)ISO 100100–32,000ISO 800
EOS R8ISO 100100–102,400ISO 800
EOS R3ISO 100100–102,400ISO 800
EOS R1ISO 100100–102,400ISO 800

Canon Log 3のベースISOは全機種共通でISO 800です。

Nikon(ニコン)

ニコンZシリーズの大きな特徴は、高画素フルサイズセンサー搭載機がISO 64をベースISOとしている点です。ISO 64は業界最低水準のベースISOであり、風景撮影などでダイナミックレンジを最大化したい場面で大きなアドバンテージとなります。

機種ベースISOネイティブISO範囲N-Log ベースISO
Z9ISO 6464–25,600ISO 800
Z8ISO 6464–25,600ISO 800
Z7 IIISO 6464–25,600ISO 800
Z6 IIIISO 100100–64,000ISO 800
ZfISO 100100–64,000ISO 800
Z6 IIISO 100100–51,200ISO 800
Z5 IIISO 100100–51,200ISO 800
Z50 II(APS-C)ISO 100100–51,200ISO 800

ISO 64対応はNikonの45MP系センサー(Z7/Z7 II/Z8/Z9)に限定されています。24MP系センサー(Z6系/Zf/Z5系)およびAPS-C機はすべてISO 100がベースです。

DxOMarkのスコアではZ7 IIが100点(最高得点)を達成しており、ISO 64でのダイナミックレンジは約14.7段と圧倒的。風景写真でRAW現像時のシャドウ持ち上げ耐性を重視するなら、NikonのISO 64ベース機は強力な選択肢です。

Sony(ソニー)

ソニーαシリーズの特徴は、多くの機種がスチルでもデュアルゲイン動作を持ち、S-Log3撮影時には明確なデュアルベースISO設定が利用できる点です。

機種ベースISO(スチル)S-Log3 ベースISO
α1ISO 100ISO 800 / 3,200
α7R VISO 100ISO 800 / 2,500
α7 IVISO 100ISO 800 / 3,200
α7C IIISO 100ISO 800 / 3,200
α7CRISO 100ISO 800 / 2,500
α9 IIIISO 250
α6700(APS-C)ISO 100ISO 640–800 / 2,500

α9 IIIはグローバルシャッター搭載のためベースISOがISO 250と高めです。グローバルシャッターでは各画素にシャッター回路用のフォトダイオードが追加されるため、フルウェルキャパシティが制限され、ベースISOが上がります。その代わり、ローリングシャッター歪みが一切ないという大きなメリットがあります。

Sonyのシネマライン機(FX3、FX6、FX9、VENICEシリーズ等)はS-Log3でISO 800を低ベース、ISO 2,500〜12,800を高ベースとするデュアルベースISO構成になっています。

Fujifilm(富士フイルム)

富士フイルムのカメラは、他社のISO 100ベースとは異なり、ISO 125やISO 160という独特なベースISO値を持っています。

機種ベースISOセンサーF-Log2 ベースISO
X-T5ISO 12540MP X-Trans CMOS 5 HR約ISO 1,250
X-H2ISO 12540MP X-Trans CMOS 5 HR約ISO 1,250
X-T50ISO 12540MP X-Trans CMOS 5 HRISO 1,250
X-H2SISO 16026MP X-Trans CMOS 5 HSISO 1,250
X-S20ISO 16026MP X-Trans CMOS 5 HSISO 1,250
GFX 100 IIISO 80102MP ベイヤーCMOS II約ISO 1,000
GFX 100SISO 100102MP ベイヤーCMOS

40MP HR(高解像度)センサー搭載機はISO 125、26MP HS(高速)センサー搭載機はISO 160がベースISOとなっています。中判のGFX 100 IIはISO 80という低ベースISOを実現しており、センサーサイズの優位性を活かした高画質が魅力です。

富士フイルムのカメラを使い始めたときに「あれ、ISO 100にならない?」と戸惑う方もいるかもしれませんが、ISO 125やISO 160がそのカメラの最高画質ポイントです。それ以下はすべて拡張ISOになります。

Panasonic(パナソニック)

パナソニックはデュアルネイティブISOの先駆者として知られています。VariCamシネマカメラで初採用した技術をLUMIXシリーズに展開しており、動画撮影者から高い支持を集めています。

機種ベースISO(スチル)デュアルネイティブISO(V-Log)
LUMIX S5 II / S5 IIXISO 100ISO 640 / 4,000
LUMIX S1HISO 100ISO 640 / 4,000
LUMIX S1ISO 100ISO 640 / 4,000
LUMIX S9ISO 100ISO 640 / 4,000
LUMIX G9 IIISO 100ISO 640 / 4,000
LUMIX GH5SISO 400ISO 800 / 5,000
LUMIX GH6ISO 100ISO 250(DR Boost対応)
LUMIX GH7ISO 100ISO 500

LUMIX Sシリーズ(S5 II/S1H/S1/S9)とG9 IIは、V-Log時にISO 640/4,000のデュアルネイティブISOで統一されています。デュアルネイティブISOの仕組みについては後ほど詳しく解説します。

OM SYSTEM / Olympus

OM System(旧Olympus)のマイクロフォーサーズ機は、全機種で公称ベースISO 200を採用しています。

機種公称ベースISO拡張低感度
OM-1 Mark IIISO 200ISO 80
OM-1ISO 200ISO 80
OM-5ISO 200ISO 64

ただし、DxOMarkの実測では「ISO 200」は実際にはISO 80〜83程度しかないことが報告されています。つまり、実質的にはISO 80程度の感度で動作しながら「ISO 200」と表示しているということ。メーカーごとにISO表記の基準が異なることを知っておくと、スペック比較の際に惑わされずに済みます。


ベースISO感度の調べ方・確認方法

自分のカメラのベースISOがわからない場合、以下の方法で確認できます。

カメラの取扱説明書で確認する

最もシンプルな方法です。取扱説明書やメーカーの製品ページに記載されているISO感度の「常用範囲」の下限値が、基本的にベースISOに該当します。「ISO 100–51,200」と書いてあれば、ISO 100がベースISOです。

メーカー公式サイトでスペックをチェックする

各メーカーの製品ページには、ISO感度の常用範囲と拡張範囲が明記されています。常用範囲の最低値がベースISO、拡張範囲の「Lo」側がベースISO未満の拡張設定です。

実写テストで確認する方法

より厳密にベースISOを確認したい場合は、同じ被写体を各ISO設定で撮影し、ノイズレベルやダイナミックレンジを比較する方法があります。三脚にカメラを固定し、同一条件でISO感度だけを変えて撮影。RAWファイルをPC上で等倍表示して暗部のノイズを比較すると、ベースISOの画質が最も優れていることが確認できます。

オンラインデータベースの活用

客観的なデータで比較するなら、DxOMarkPhotonsToPhotosが最も信頼性の高い情報源です。

DxOMark(dxomark.com)では、カメラの「Measurements」タブから各ISO設定ごとのダイナミックレンジ、SNR、色深度がグラフ表示されます。「Landscape Score」がベースISOでの最大ダイナミックレンジを直接示す指標です。

PhotonsToPhotos(photonstophotos.net)では、PDR(Photographic Dynamic Range)チャートでISO設定ごとのダイナミックレンジをグラフで確認できます。カーブのピーク(最も左の点)がベースISOです。複数の機種を重ねて比較できるため、カメラ選びの際にも非常に便利です。

特にPhotonsToPhotosのリードノイズチャートでは、特定のISOでノイズが急激に低下するポイントが見えることがあります。これがデュアルゲインの切り替えポイントで、メーカーが公式に発表していないデュアルゲイン動作を発見する手がかりにもなります。


ベースISO感度を活用した撮影テクニック

ベースISOの知識を実際の撮影でどう活かすか。シーン別に具体的な活用法を紹介します。

風景写真での活用

風景写真はベースISOの恩恵を最も受けやすいジャンルです。三脚を使用して低速シャッターで撮影する場合、ISO感度を上げる必要がないため、迷わずベースISOに設定しましょう。

最大限のダイナミックレンジを活かせるベースISOなら、朝焼けや夕焼けの空のグラデーション、森の中の光と影のコントラストなど、輝度差が大きいシーンでもハイライトからシャドウまで豊かな階調で記録できます。

明るい環境でスローシャッター(流水表現など)を使いたい場合は、NDフィルターと組み合わせることでベースISOを維持したまま長秒露光が可能です。ここで拡張Loに頼るより、NDフィルターを使う方がダイナミックレンジを犠牲にしません。

ポートレート撮影での活用

自然光でのポートレート撮影でも、光量が十分であればベースISOが理想的です。肌の質感や髪の毛の細部が最も美しく表現されます。

ストロボを使用するスタジオ撮影では、フラッシュの光量で露出をコントロールできるため、ほぼ常にベースISOで撮影可能です。ベースISOで撮影したポートレートをRAW現像すると、スキントーンの微妙なグラデーションが滑らかに再現され、レタッチの自由度も高まります。

商品撮影・物撮りでの活用

商品撮影では、製品のディテールや質感の正確な再現が求められます。ライティングを工夫して十分な光量を確保し、ベースISOで撮影することで、素材の質感や微細なテクスチャまでしっかりと記録できます。

商品撮影では三脚の使用が前提となることが多いため、シャッタースピードに制約がなく、ベースISOを常用しやすい環境です。

動画撮影での注意点

動画撮影では、スチルとは異なるベースISOの考え方が必要です。S-LogやV-Logなどのログ撮影時は、通常撮影とはベースISOが異なります

例えばソニーのS-Log3ではISO 800がベースISO、パナソニックのV-LogではISO 640がベースISOです。このベースISO未満で撮影すると、ログカーブのメリットであるハイライト側のダイナミックレンジが狭まってしまいます。

デュアルネイティブISO搭載機では、明るいシーンでは低ベースISO、暗いシーンでは高ベースISOを選択し、中間ISOはできるだけ避けるのがベストプラクティスです。明るさの調整はNDフィルターで行いましょう。


ベースISO以外の設定が必要なシーン

ベースISOが最高画質を引き出す設定であることは間違いありませんが、すべての撮影でベースISOが使えるわけではありません。状況に応じてISOを上げる判断も重要です。

手持ち撮影でシャッタースピードを確保したい時

手持ちで撮影する場合、手ブレを防ぐために一定のシャッタースピードが必要です。一般的には「1/焦点距離」秒以上のシャッタースピードが目安。50mmレンズなら1/50秒以上です。

ベースISOでは十分なシャッタースピードが得られない場合、ISO感度を上げる判断が必要になります。手ブレした写真よりも、ISO 400〜800で撮ったシャープな写真の方が、結果として高画質です。最近のカメラはISO 800程度なら十分に実用的な画質が得られます。

ボディ内手ブレ補正が搭載されたカメラなら、補正効果の分だけISO感度を抑えられます。たとえば5段分の補正効果があれば、理論上は1/焦点距離から5段遅いシャッタースピードでも手ブレしにくくなります。

暗所・室内撮影

室内やイベント会場など照明が限られた環境では、ISO 400〜800が現実的な使用域になります。最新のフルサイズカメラであれば、ISO 1600程度でも十分にクリーンな画質が得られるものが多く、必要以上にISO感度を恐れることはありません。

ポイントは「許容できるノイズレベル」と「必要なシャッタースピード」のバランスです。ブレた写真にはどんなノイズリダクションも効かないので、まずはシャッタースピードの確保を優先しましょう。

スポーツ・動体撮影

スポーツや動体の撮影では、被写体ブレを防ぐために1/500秒〜1/2000秒程度の高速シャッターが必要です。屋外の晴天下であればベースISOでも対応できますが、曇天や屋内スポーツではISO 3200〜6400が必要になることも珍しくありません。

最新の高感度に強いカメラ(α9 III、Z9、EOS R3など)であれば、ISO 6400でも実用に十分な画質を維持できます。「ベースISOで撮れなかったから失敗」ではなく、「その瞬間を確実に捉えるためにISOを上げた」と前向きに考えましょう。

星空・夜景撮影

星空撮影は、ベースISOとは正反対の高感度ISO(ISO 3200〜12800)を必要とするジャンルです。赤道儀を使った追尾撮影であればISO感度を抑えられますが、固定撮影では星が流れないよう15〜30秒程度の露出が限界となるため、高感度が必須です。

デュアルゲインを持つカメラ(多くの最新機種)では、高ベースISO付近(ISO 500〜800やISO 3200付近)でリードノイズが急激に下がるため、単純にISOを上げ続けるよりも、これらの切り替えポイントを意識した設定が有効です。


デュアルネイティブISO(デュアルベースISO)とは

近年の動画向けカメラで大きな話題となっているのが、デュアルネイティブISO(デュアルベースISO)技術です。

デュアルネイティブISOの仕組み

通常のISO変更は、1つのアナログ増幅回路のゲインを段階的に上げていく仕組みです。これに対してデュアルネイティブISOでは、センサーの各画素に2系統の独立したアナログ増幅回路が搭載されています。

低感度側では1つ目の回路を使い、高感度側ではまったく別の回路に信号を迂回させます。2番目の回路に切り替わった時点でノイズフロアが「リセット」されるため、中間ISO(デジタルゲインで無理やり増幅した領域)よりもクリーンな画質が得られるのです。

たとえばパナソニックのLUMIX S5 IIでは、V-Log撮影時にISO 640が低ベース、ISO 4,000が高ベースです。ISO 640〜4,000の中間域(例:ISO 2,000)よりも、ISO 4,000の方がノイズが少ないという、直感に反する結果になります。

メーカーごとの呼び名の違い

同じような技術でも、メーカーによって呼称が異なります。

パナソニックは「Dual Native ISO」、ソニーは「Dual Base ISO」と「Dual Base Sensitivity」を区別しています。ソニーの場合、VENICE/FX9/FX30は真のデュアルベースISO(両方のベースで同等の画質)、FX6/FX3/A7S IIIは「Dual Base Sensitivity」(高ベース側でわずかにノイズが増加する)とされています。

キヤノンは「Dual Gain Output(DGO)」という名称で、C300 Mark III/C70では2系統のゲイン信号を同時に読み出して合成するHDR方式を採用。さらにC400/C80は世界初の「Triple Base ISO」(ISO 800/3,200/12,800)に対応しています。

BlackmagicのPocket Cinema Camera 4K/6K系はISO 400/3,200のデュアルベースISOを持ち、ISO 1,250付近で自動的に切り替わります。

デュアルネイティブISOの活用ポイント

デュアルネイティブISO搭載機を使う際の最も重要なポイントは、「いずれかのベースISO付近で撮影し、NDフィルターで露出を調整する」ということです。中間ISOが最もノイズの多い領域になるため、できるだけ避けるのがベストです。

明るいシーン → 低ベースISO(ISO 640等)+ NDフィルター
暗いシーン → 高ベースISO(ISO 4,000等)

この使い分けを意識するだけで、動画の画質が目に見えて向上します。


ログ撮影時のベースISO感度一覧

ログ撮影時にベースISOが通常より高くなる理由は、ログカーブがハイライト領域に多くのコード値を割り当てるためです。ソニーの映像技術者Alister Chapman氏の解説によれば、S-Log3のISO 800はハードウェアレベルでは通常モードのISO 100と同じ増幅状態──ISO数値の違いはログカーブによるトーン再配分を反映しているに過ぎません。

メーカーログプロファイルベースISO(低)ベースISO(高)※デュアル機
SonyS-Log3ISO 800ISO 2,500〜12,800(機種による)
PanasonicV-LogISO 640ISO 4,000(S系/G9 II)
CanonCanon Log 3ISO 800ISO 6,400(R6 III)
FujifilmF-LogISO 640
FujifilmF-Log2ISO 1,250
NikonN-LogISO 800
OM SystemOM-Log400ISO 400

ログ撮影時にベースISO未満で撮影すると、ログカーブの恩恵であるハイライト側のダイナミックレンジが狭まります。逆にベースISOを大幅に超えると暗部ノイズが増加します。ログ撮影ではベースISOを起点に露出を組み立てることが基本です。


ベースISO感度に関するよくある質問(FAQ)

Q1. ベースISOより低い拡張ISO(Lo)を使うべき?

基本的にはおすすめしません。 拡張Lo ISOは、カメラがベースISOでセンサーを駆動しつつ1段分多く露光させ、得られた画像をデジタル処理で暗く減算して実現しています。

結果として、ハイライト側のダイナミックレンジが約0.7〜1.0段狭くなります。白飛びしやすくなるということです。暗部ノイズはわずかに改善される場合がありますが、失われたハイライト情報は後処理でも回復できません。

NDフィルターなしで明るい環境にいて、どうしてもスローシャッターを使いたい場合の緊急手段と考えましょう。

Q2. デュアルネイティブISOとは?どう活用する?

前述のとおり、センサーに2系統の独立したアナログ増幅回路を持たせ、撮影状況に応じて最適な回路を選択する技術です。動画撮影者にとっては特に重要で、暗所撮影時に従来の「ISOを上げるとノイズが増える一方」という制約を大幅に緩和してくれます。

活用のコツは、2つのベースISO付近を使い分けること。中間ISOを避け、NDフィルターで露出を調整するのが基本です。

Q3. ベースISOで撮影すると常に画質が最高になる?

ダイナミックレンジとノイズの観点では「はい」ですが、ブレた写真は最高画質とは言えません。 手持ち撮影で十分なシャッタースピードが確保できない場合は、ISOを上げてシャープな写真を撮る方が結果的に高画質です。

ベースISOはあくまで「理想的な条件下での最高画質」であり、実際の撮影では状況に応じた柔軟な判断が必要です。

Q4. ISOオート設定でもベースISOを意識すべき?

ISOオートを使う場合でも、上限ISO感度最低シャッタースピードの設定を意識しましょう。多くのカメラではISOオートの下限がベースISOに設定されているため、光量が十分な環境では自動的にベースISOが選ばれます。

ただし、カメラによっては「オートISO下限」がベースISO以外の値に設定されている場合もあるため、一度メニューを確認しておくと安心です。

Q5. 中判カメラと35mmフルサイズのベースISOの違いは?

中判カメラ(GFX 100 IIなど)はセンサーサイズが大きいため、画素あたりのフルウェルキャパシティが大きく、ベースISOでのダイナミックレンジが35mmフルサイズを上回ります。GFX 100 IIのベースISO 80は、同等の画素ピッチを持つフルサイズ機よりもさらに低い値を実現しています。

ただし、ベースISOの数値だけで画質は決まりません。センサーサイズ、画素数、リードノイズ、画像処理エンジンなど、総合的な性能が画質を左右します。

Q6. ログ撮影時のベースISOはなぜ高い?

ログカーブは、広いダイナミックレンジを限られたビット深度に圧縮記録するための非線形トーンカーブです。ハイライト領域に多くのコード値を割り当てる設計のため、適正露出を得るためにISO表示値が引き上げられます。

ただし実際のセンサー増幅レベルは通常モードのベースISOと同じ状態であることが多く、ISO数値が高いからといってノイズが増えるわけではありません。S-Log3のISO 800は、通常モードのISO 100相当のアナログゲインで動作しています。


まとめ:ベースISO感度を理解して撮影の幅を広げよう

ベースISO感度は、カメラが持つ画質ポテンシャルの起点です。この記事の要点をまとめると、以下のようになります。

ベースISO感度は画質の基準点。 ノイズ、ダイナミックレンジ、色再現性、ディテール──すべてが最も優れた状態で撮影できるISO設定値です。

自分のカメラのベースISOを把握することが第一歩。 Canon/Panasonic/OM Systemの多くはISO 100(OM SystemはISO 200)、NikonのZ7 II/Z8/Z9はISO 64、Fujifilm X系はISO 125またはISO 160、Sony α9 IIIはISO 250と、機種によって異なります。

撮影シーンに応じた柔軟な判断が重要。 三脚を使える風景やスタジオ撮影ではベースISOをフル活用。手持ちや暗所ではシャッタースピード確保を優先してISOを上げる。どちらも正しい判断です。

動画撮影者はログ撮影時のベースISOとデュアルネイティブISOを理解する。 通常モードとログ撮影ではベースISOが異なること、デュアルネイティブISO搭載機では中間ISOを避けることを意識するだけで、映像の画質が変わります。

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